夫が既婚女性と不倫をして、相手が妊娠
おなかの子の父親は、誰になるのでしょうか

相談者によりますと、夫の不倫相手は結婚してまだ1年程の新婚女性です。生物学上の父親が誰かは定かでなく、相談者は「夫が認知請求されるのではないか」と、不安を抱いている様子です

法律上、お腹の子の父親は、誰になるのでしょうか。
弁護士に聞いてみました。

・「嫡出否認」しなければ、夫婦の子

「婚姻成立の日から、200日経過後に誕生した子は夫の子と推定されます（民法772条）。その為に、妊娠した女性の夫が『嫡出否認』（民法774条〜778条）しない限り、夫婦の子と扱われるのです。

そして、嫡出否認の訴えを提起できるのは（妊婦の）夫のみであり、訴えられる期間も子の出生を知ってから1年間以内に限定されます」

相手の夫にアクションをとって貰わないと、いけないのですね

「基本的にはそうなります。ただし、夫の失踪・収監・外国滞在・夫婦の事実上の離婚などの事情により、夫による懐胎があり得ない事が外形的に明らかな場合は、民法772条の推定を受けず、夫以外の者も『親子関係不存在確認』の方法で父子関係の存否を争う事が出来できます」

今回のケースでは、特別な事情がない限り、法律上は婚姻状態にある夫婦の子とみなされるのです

相手女性の夫による懐胎が不可能な事が外形的に明らかでない限り、相手女性の夫が「嫡出否認」をしなければ、法律上は相手女性の夫婦の子と確定します。

これにより、相談者の夫が、認知や養育費などを請求される余地はなくなります

・「生物学上の父親」が「法律上の父親」になるとは限らない

相手女性がDNA鑑定の結果を証拠に、子供は「（相談者の）夫との子供」であると訴える事は出来るのでしょうか

「最高裁判所平成26年（2014年）7月17日判決は、たとえ夫の子ではないというDNA鑑定があっても、前述のように外形的に夫による懐胎が不可能であることが明らかな事情がない限り、妻は夫と子の親子関係不存在確認はできないと判断しています。

今回のケースでも、相手女性がDNA鑑定を根拠に争う事は出来ません。法律上は、生物学上の父子関係とは異なる親子関係が確定する事になります」 　

将来的に、相続時にトラブルとなる可能性はないのでしょうか

「相続は、法律上の親子関係に従ってなされます。法律上、相手女性の夫の子と確定すれば、子は相手女性の夫の法定相続人になります。仮に、相談者の夫が生物学上の父であったとしても、法律上の親子関係が認められない限り、相談者の夫と子の間に相続は発生しません」



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男女が共に人生を歩もうとする時に、その選択肢は「結婚」という形だけではありません

昨今は、婚姻届を提出しない「事実婚」を選択するカップルも珍しくないのです。一方で、以前からある「内縁」（ないえん）や「同棲」（どうせい）との違いについて疑問を持つ人も少なくないようですね

正しく説明できる自信がない方もみえると思いますが、どれを選ぶのも当人の自由です。それぞれにメリットとデメリットがあるので、調べてみましょう

「事実婚」「内縁」「同棲」には、法的にどういった違いがあるのでしょうか

「婚姻の意思」があるかどうか


Q.「事実婚」とは何ですか。婚姻届を出す「法律婚」との違いとは

「事実婚」とは、婚姻届を提出せずに、双方が婚姻の意思を持って、社会生活上、夫婦同然の生活を送る関係の事です。
『法律婚』が婚姻届を提出して、法律上の婚姻関係になる（民法739条）のに対して、「事実婚」は婚姻届を提出していない為、法律上の夫婦にならない所に違いがあります。

「事実婚」であっても、法律婚に準じるものとして、法的に保護されるものもあります。
例えば、「事実婚」のパートナーであっても、健康保険の被扶養者になる事が出来ますし、要件を満たせば遺族年金も受け取る事が出来るのです
しかし「事実婚」は、法律婚とは異なって、パートナーが亡くなっても法定相続人にはなれないのです遺言をする事によって、パートナーに財産を残す事は出来ますが、その場合でも相続税の関係で不利になるといったデメリットもあります

 その他、様々な手続きで「事実婚」である事を証明する手間がかかったり、所得税の配偶者控除・配偶者特別控除を受けられなかったりするなど、法律婚と異なる点も色々とあるようですね

そんな中でも大きな違いとして、「事実婚」の夫婦の間に子供が生まれた場合、戸籍の父親欄が空欄になってしまい、法的な父子関係を生じさせる為には『認知』が必要となる事が挙げられます


 Q.「内縁」や「同棲」とはどう違うのでしょうか

『内縁』は、事実婚とほぼ同じ意味と考えて良いようです。かつて存在した家制度のもとでは、『婚姻届を提出したいけれど、家の事情で出せない』状態が存在して、それを『内縁』と呼んでいたようですね。その為に、主体的に婚姻届を出さない『事実婚』に対して、『内縁』には、「事情があって出せない」というニュアンスがあったと考えられます。

しかし今では、婚姻届を提出しない理由がどうであれ、『内縁』と『事実婚』を同義で使う事が多いようです。

一方で『同棲』は、婚姻の意思を持たずに、一時的に共同生活を送るケースも含みます。つまり、婚姻の意思の有無が、事実婚や内縁との違いになります。


Q.事実婚や内縁は、何をもって「解消」とするのでしょうか

「事実婚」や「内縁」は、お互い納得して夫婦同然の生活を終了させれば『解消』となります。離婚届の提出といった手続きは必要ありません。ただし、パートナーが解消したくないと言っているのに、一方的に解消する為には『正当な理由』が必要と考えられています。

正当な理由がないまま別居に至ったような場合、パートナーから慰謝料などを請求される可能性があります。
なお、「事実婚」の夫婦の間に生まれた子供について、父親が認知していなかった場合、法律上の父親ではない為、子供に対して扶養義務を負いません。その為、「事実婚」を解消した相手に養育費の支払いを請求したい場合には、認知を求めた上で請求する事になります。




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