2014年04月23日
Hしなくても浮気で慰謝料請求される
一線を越えない“プラトニック”な関係を貫いても、賠償命令が下されました
以下、記事を掲載します。
一線を越えない“プラトニック”な関係を貫いても、やはり「不倫」に代償は必要だった。夫と親密な関係になり精神的苦痛を受けたとして、大阪府内の女性が、夫の同僚女性に220万円の損害賠償を求めた訴訟で、大阪地裁は3月、44万円の支払いを命じた。判決は、同僚女性が夫に何度も肉体関係を迫られながら、巧みにかわして「貞操」を守ったと認定。それでも、同僚女性が夫のアプローチをはっきりと拒絶せず、逢瀬を重ねて二人きりの時間を過ごしたことから、地裁は「同僚女性の態度と夫の(原告女性への)冷たい態度には因果関係がある」と判断した。
夫婦問題の相談から…
判決によると、原告女性は夫と平成18年に結婚し、20年に長男を出産。結婚当初から精神的に不安定な面があり、精神科に通院していたという。夫は医療機器販売会社に勤務し、大阪を拠点に営業を担当していた。
夫婦は21年6月ごろからけんかを繰り返すようになった。原告女性が自宅の壁を蹴って穴を開けたり、マラソン大会に出場しようとした夫のマラソンシューズの靴紐をはさみで切ったりするなど、激しさを増していったという。
一方、夫が東京に勤務する同僚女性と知り合ったのは21年4月ごろ。最初は電話やメールで仕事上のやり取りをするだけの関係だったが、22年秋以降、「夫婦間の交渉がない」「妻が大声を出して暴れる」などと、夫婦関係について夫が同僚女性に相談するようになった。
ただ、同僚女性側の主張によると、同僚女性は当初、夫からの相談にも「人として真摯(しんし)に耳を傾ける」だけだった。
「やらせて」頑と応じず
転機が訪れたのは23年6月。出張で関西を訪れた同僚女性を夫が食事に誘った。7月には神戸市内で食事をしたのに続き、東京都内の女性の自宅近くでも食事を楽しんだ。
「好きになった」
食事を重ねる中、夫は女性にストレートに思いを告白した。これに対し、女性は「奥さんがいる人は、そういう対象として見ることができない」といなし、「好きというなら、最低限、独身でないと嫌」と伝えたという。しかし、その後も夫からのアプローチが止むことはなかった。
翌8月中旬、女性は出張でJR新大阪駅に到着すると、夫が駅まで車で迎えに来た。一緒に仕事先へ向かう途中、夫は助手席にいた女性の手を握ったり、足を触ったりした。女性は「触るなよ」「足あんまり触らないこと」などと言って制止した。すると、夫は駐車場に車を止め、いきなりキスをしてきた。
女性は「何でチューするの」「付き合っていない人とチューするのはおかしいですから」「付き合ったらチューすればいいじゃん」と抵抗。さらに、夫は「やらせて」と肉体関係を迫ったが、女性は「えっ!えっ!えっー!」と声を上げ、頑として応じなかったという。
抱きしめられ抵抗せず
だが、2人はその後も一線を越えないまま、親密な関係を続けた。
8月下旬、都内の同僚女性の自宅近くの公園で夫が待っていると、同僚女性が夫のリクエストに応じて浴衣姿で現れた。2人は手をつないで買い物などを楽しみ、さらに自転車に2人乗りして花火大会の会場に向かった。
2人だけの時間は花火の観覧後も続いたが、寝床は別だったようだ。女性の自宅近くのビジネスホテルには、夫が午前1時48分に到着した記録が残っていた。
翌朝、ホテルを出た夫は女性の自宅マンションまで行ったが、ここでも女性の部屋には入らず、出てくるのを待った。自転車に2人乗りして近くの体育館に行くとバドミントンで汗を流し、買い物や食事を楽しんだ。夫が大阪へ帰る際、2人は駅まで再び手をつないで歩いた。夫は別れ際にキスしようとしたが、女性は体を退けて逃れた。
次の逢瀬は9月下旬。出張で滋賀県内のホテルに滞在していた同僚女性のもとに、夫が車で駆けつけた。近くの居酒屋で飲食した後、歩いて宿泊先のホテルの前までやってくると、夫が女性をいきなり抱きしめた。女性は今度はなぜか抵抗しなかった。
ただ、2人で一緒にホテルのロビーまで入ったが、夫は女性とは別の部屋にチェックイン。別々のエレベーターで居室に向かった。翌朝も夫は午前7時半ごろ、女性は午前10時ごろ、それぞれ別々にチェックアウトしていた。
この直後、2人の関係に突然終止符が打たれた。夫の行動を怪しんだ原告女性が、2人の「親密」さを示す証拠を集め、翌10月に慰謝料などを求める内容証明郵便を同僚女性に送付したからだ。夫は同年末、原告女性との離婚調停を求めたが、成立しなかった。
「無謀な期待抱かせた」
判決では、2人の遠距離ゆえの数少ない逢瀬の場面を取り上げ、肉体関係があったかどうかを検証した。
新大阪駅からの車中で夫が行為に及ぼうとした状況について、同僚女性が声を上げて抵抗したことなどを事実と認め、肉体関係の可能性を否定。花火大会を観覧した前後についても、夫がビジネスホテルに到着した記録が残っていることや、別れ際に女性がキスを避けたことから、肉体関係を「認めるに足る証拠はない」と判断した。
さらに、滋賀県内のホテルでの出来事についても、別々のエレベーターで居室に向かったことや、2人のチェックアウトに2時間以上の差があることなどを列挙。「同僚女性が夫と肉体関係にならないよう警戒しており、2人が肉体関係を有するに至ったとは認められない」と結論づけた。
一方で、同僚女性が肉体関係を求められて拒否したにもかかわらず、その後も逢瀬を重ねたことを「社会通念上、相当な男女の関係を超えたものと言わざるを得ない」と指摘。同僚女性の言動が「家庭内で問題を抱える夫に無謀な期待を抱かせた」とも言及した。
結局、肉体関係がなかったとはいえ、夫の家庭での冷たい態度と同僚女性の対応には因果関係があるとして、判決は同僚女性側に44万円の支払いを命じた。これに対し、一線を越えない“努力”が認められなかった同僚女性側は、判決を不服として控訴した。
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